作家二階建て論とか
〜99年「夏の文学教室」〜



源一郎氏の話から(記憶を頼りに)。

「作家には、いわば一階で生活している自分とそれについて二階で書いている自分とがある。それは、書いている自分とそれに合わせて生活している自分であるとも言える。その関係に悩んでしまう作家と悩まない作家がいる。太宰治をはじめとして悩む側の文学者は自殺しがちだ。一方、江藤淳はいわば純日本風平屋建て作家だった」とかなんとか。

私には、源一郎氏が、作家が二階建てであることの不思議さについてずっと考え、 現代ではそれが宿命的であるといったん諦めたうえで、それでもどこかでそれを超越する次元を夢見ている人であるように思われました。

読売ホールはぎっしり満席。実年女性が目立ちました。「こんな暑いのに皆さんよくいらっしゃいました・・・僕なら来ません。」「(聴衆の真剣な)視線が痛い。」とか照れつつも、きちんと話をしてくれてラッキーでした。

高橋源一郎氏はあくまで友達っぽくふるまうところに、島田雅彦氏は逆に文士然としたところを隠さないところに、私はそれぞれ好感が持てました。

壇上の作家と客席の読者はやはりバーチャルな人間関係であるのだから、講演会に行くよりは著作の一冊も読んだほうがいいと思ったりしていましたが、こういう場所では、作家が先月書いたことではなく今まさに考えていることが出てくるとしたら、それは貴重だと思いました。


Junky
1999.7.

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