正しく、かけないなら、
せめて、大きくかくか

■講談社文芸文庫というのがあります。文庫のくせに高額、で有名らしい。それでもきょう、その中の一冊である高橋源一郎「さようなら、ギャングたち」を1060円(税別)も出して買ったのは(単行本も同じ講談社の普通の文庫本も所有しつつも、また買ってしまったのは)、巻末の解説が読みたかったからです。高橋源一郎の小説に対して腑に落ちる賞賛も非難も見あたらないのは不思議だね、という話を、先日参加した高橋源一郎愛読者のオフ会でしたところ、「加藤典洋の書いたのがありますよ」と教えられ、現物も見せてもらった。それがこの文庫本。ざっと読み、ぐいっと引き込まれた。なんというか、この解説、きっと最初から最後まで全部当たっている、いや仮に全然当たっていなくても、そのままうのみにして、あれこれ考えるのはもうよそう、という気になる。それ以上何も言えません。というか、それ以外のことも、最近、あまりうまく言えないことばかりです。失語症にでもかかりたがっているのでしょうか。今さら。生意気に。■ことばが、なんか、おかしい。でも、ことばを、また、はじめる。高橋源一郎の小説はそれだというようなことにもなっています。でも、そうして出来た、高橋源一郎の小説の、ことばは、やっぱり、どうかんがえても、へんだ。しかも、それについて、なにも、かかない、たくさんの評論家は、むしろ、へんではない。それについて、なんらかを、しっかり、かく、加藤典洋の、ことばは、けっこう、へんだ。■ことばが、なんか、おかしい。どうかんがえても、どうつかってみても、へんだ。そんな状況に陥ったら、(いや、絶対誰でもそんな状況に陥るにきまってるのですが)、そんな状況を打開する一番いい方法は、結局、ことばを、そのまま、やめてしまうことしかないのだと思う。絶望的。それ以外は、また、へんなもの、おかしいもの、を積み重ねることでしかない。絶望的。絶望的。そのまま、ことばが、しんで、ことばを、しんで、ことばで、しんで、そのまま消えたひと、消えたもの、消えたことば。そっちの方が正しい、そっちの方が偉い、---かどうか、そこまでは断定しないでおくけれども--、少なくとも、そっちの方が、へんでない、おかしくない、まっとうだ。結論はそこなのか。最初からはっきりしていたのか。■だったら、なぜ、高橋源一郎は、それでも、ことばを、するのだろう。なぜ、加藤典洋は、それでも、ことばで、するのだろう。いや、だから、それは考えても正答には達しないんだって。ことばは、最初から最後まで、間違いしかないのだから。ふつうは「間違いだから、やめる」か、あるいは「間違いだけど、やめない」のどちらかなのだろうが、高橋源一郎は「間違いだから、やる」というつもりか。■まとまってみえても、まとまってみえなくても、以上、ぜんぶ、間違い。


Junky
2000.2.1

http://www.tk1.speed.co.jp/junky/mayq.html
From Junky
迷宮旅行社・目次