コミュニケーション不全症候群@デジタルネットの真ん中で


集会「電子ネットワークと表現をめぐって」のあと、みんな飲みにいくようなので新参者だが僕も着いていった。12時近くなりさてどうしようという時、参加した人の中に知人Xさんがいて「泊めてあげる」と言ってくれたので、おじゃました。

Xさんは今、ニッポンの通信回線の総元締めであるところのまるでNTTかと憶測されそうな某大株式会社で、電子コミュニケーションをテーマにした新しいミュージアムづくりにキュレーターとして関わっている。現在はオフィスに通い他の社員およびフリースタッフと一緒にオープン準備のデスクワークをしているらしい。
そのXさんの話。

まるでブラジルの毎日。

映画「未来世紀ブラジル」のことだった。明けても暮れてもモニターとだけ向き合う日常。人との普通の会話に飢えている様子だ。しかもコンピュータを通じた毎日の作業がなにか意味あるものを生み出しているとは思えないと嘆く。
そのミュージアムは97年に完成する。関わるブレーンは浅田彰、武邑光裕といった誰しも納得のメンバーばかり。アーティストは、内緒かもしれないが、国内では三上晴子の名が上がった。デジタルワークにわずかでも関心のある僕のような者にとって、Xさんの仕事ほど創造性も現代性もあるものはないと思えて、うらやましい限りだ。
ところがである。それに携わる者たちの仕事ぶりが「みんな狂ってる」と言うのである。オフィスでは誰もが黙りこくっていて、お互いなにをしているのかも知らない。朝挨拶しないのも普通になった。そのくせ会議だけは日に6回もあるとか。

こないだなんて隣に座ってる奴の伝言が電子メールで届いた。

メールの方が呼びかけもややこしい前置きもいらないし、お互いの仕事も中断しなくてすむから、ということなのだろうが。
でも、ほんとにこんなそばにいるのに、顔も見ず、言葉もかけないなんて、いくらなんでも、それはないよ、ぜったい、おかしいよ、とXさん。
フロアーはとにかく全員無言。キイボードを叩く音にときおりメール到着を知らせる電子音だけが響くのだという。

そんな会社がインターコミュニケーション家の光なんていうんだから笑っちゃう。

Xさんは同じプロジェクトの一貫でその大会社が発行している雑誌の名(特定できないようにするため一部改名)をあげて、つぶやいた。

Xさんは、別にパソコン恐怖症で窓際に追いやられそうなオヤジ族ではない。それどころかコンピュータやデジタルネットワークを含めた先端の世界を見極めさらに先を切り開くような分野に積極的に関わってきている人だ。そのXさんの感想としては、とにかく意外だった。
そもそもXさんが実は平均以上に人間くさく人なつこい人物だったのか。それもあるかもしれない。しかし一方で、ニッポンのデジタルネットワーク事業がその某会社を中心に華々しく進んでいるが、それは皮肉にもふれあいとかうるおいとかを著しく欠いたネットワークを作業現場に現出させてしまっていることも事実なのだろう。
ふれあいとかうるおいが欲しいなんて、今回の東京行きの結論としてはあまりに陳腐なイメージを追っているだけかもしれないが、やっぱりそういうものが全く要らないとも言い切れない。浅田彰氏なら、どうコメントするだろう。機会があったら聞いてみて、Xさん。

記憶違いはあるかもしれませんが脚色はありません。
画像はXさんの部屋にあったマックのバックグラウンドから撮りました。


ところでXさんは3月まで郷里の美術館で学芸員をしていました。誰だか見当がつく方のみにXさんの正体を明かします。アドレスは"http://www2.ganseki.or.jp/~junky/******.html"です。******の部分はXさんの出身県名とXさんの名字を続けて打って埋めて下さい。


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