オーロラの言葉



ことしは日本でもオーロラが見られるかも?
なんていう話を知っていますか。
仕事がらみで仕入れたネタなのですが。

太陽から地球には「太陽風」と呼ばれるプラズマ粒子の流れが常に吹いています。このプラズマ粒子が地球の磁気圏に入り込み、極地方の上空で酸素や窒素に衝突して発光する現象がオーロラです。

で、もう一つお勉強ですが、太陽というのはいつも同じように輝いているのではなく、11年周期で活動が激しくなり、ことし2000年はそのピークを迎えています。この時期には、太陽表面に増えてくる黒点の周辺で大きな爆発がよく起こり、そのせいで「太陽風」がまるで津波のように地球に押し寄せます。するとオーロラの発光もまた巨大になり、いつもより低緯度で見えるというわけです。事実ことし4月には北海道でオーロラの写真撮影に成功したりしています。

さてさて、こういったオーロラ発生の説明で、私が面白いなと思ったのは、南極から北極に向かって閉じている地球の磁力線が、太陽風を受けることによって外部に開かれ、宇宙空間の磁力線につなぎ変えられるという仕組みです。

図にしてみました。これは地球だけで閉じている磁力線です。

そこに太陽風が吹き付けてくると、地球左にあった磁力線の一部が開き、地球右の方向にどんどん伸びながら、宇宙空間を流れる磁力線につながっていきます。地球から宇宙空間につながった磁力線は、さらに×の辺りで、地球内部の磁力線として再び閉じます。

磁力線のこういった変化に伴って、太陽風が運んできたプラズマ粒子が、宇宙空間の磁気圏から地球の磁気圏へと入り込むのです。するとプラズマ粒子はスピードを増して地球に突っ込み、オーロラの発光を起こします。プラズマがスピードを増すのは、開いた磁力線が再び閉じる瞬間、磁力線に貯えられたエネルギーが放出され、プラズマ粒子を加速するからだと考えられています。

なんとなくイメージがわいたでしょうか。

地球の内部で閉じていた磁力線が、太陽の風を受けることで外に開かれ、宇宙の磁力線につながっていくというイメージ。宇宙につながった磁力線が再び地球内部に閉じてくる瞬間、磁力線は強いエネルギーを放出するというイメージ。そのエネルギーでプラズマ粒子が加速されて発光するというイメージ。

私の内部で閉じていた言葉の磁力線は、外部の風を受けることによって、はじめて、宇宙を流れる言葉の磁力線につながっていく。宇宙の言葉とつながった私の言葉は、ふたたび私だけの言葉として回帰してくる。その瞬間、その言葉に貯えられていたエネルギーが放出され、光を放つ。

言葉の磁場。言葉の冒険。言葉のオーロラ。

言葉をそんなふうに働かすこと。

私の言葉を宇宙の言葉につなぎかえてくれる外部の風とは、何なのでしょう。


Junky
2000.7.29

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