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だらだら話 3

  何でヨガを?
「第2話アシュラム」にも、何通かのお返事をいただきまして、有り難うございました。字が小さすぎるとの声がおふたりからありましたが、読んでくださるほうで、字の大きさは調節できるそうですので、それをやってみてください。今日は、この質問に対して、、、、、、「ヨガは、いつから、何故、どのようにしてはじめたのですか?」いつも、いい加減なことばかり言うようで、気がひけるのですが、何の理由もなく、その時の成り行きで始めたのです。56歳の時でした。インドに住んでいる、塾の卒業生が、遊びに来ないかと誘ってくれたのです。前からなんとなく行きたかったインドにさあいくぞ!とすっかりその気になっていましたら、なんと、彼が日本の本社に戻ることになってしまったのです。でも、もうその気になってしまったんだから止まりません。外国へ行った時、ホテルに泊まるのは、つまらなくて好きじゃないものですから、その日から方々聞いて回りました。「誰かインドで泊めてくれる人をしらないかあ。」と。なかなか見つからなかったのですが、最後に、知人のまた知人、「ヨガの先生のところに行けば泊めてくれますよ。それに安いし。」いう情報を入れてくれました。ラッキー、それえ!とばかりに飛びつきました。インド人の家庭に入れるなんて、願っても無い幸運と舞い上がって、あとのことは何も考えませんでした。ヨガの先生のところに行くと言うことは、ヨガを教わるということだとは、思いもしなかったのは何故なんでしよう?どなたか教えてください。

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最近は、尚子という良い旅仲間ができていますが、そのころはまだ、何処へ行くのもひとりでした。それに、タクシーなんかには乗らないと、突っ張っていましたから、インドのダムダム空港から、バス、電車、リキシャと乗り継いで先生のお宅までたどりつきました。今考えると、よく行ったものだと、われながら感心します。特に、満員のバスの中では、不安で、車掌さんに何度も「ダムダムステイション」と繰り返して頼むのですが、車掌さんは、全然反応をみせないで、黒いこわい顔をしているので、本当に何処で降りたらいいのかとブルブルブルっていました。でも、ダムダムステーシヨンに着いたら、ちゃんと教えて降ろしてくれました。インドの人って顔よりはいい人なんだと思いましたねえ。

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ところで、インドでは、リキシャが、大切な交通手段のひとつです。これは、終戦後、日本で盛んに使われた人力車です。日本ではもう使われなくなったとき、インドに輸出され、その時名前も輸入されたのでしょう。私たちにとってはただみたいなお金で、何処ヘでも行ってくれるので、本当に便利です。

さて、先生のところにたどり着いて見ると、日本からヨガを教わりに来た、ということになってしまっていました。考えてみれば当たり前のことですから、「ちょっとそれは違うんですが」とも言えないで、おとなしくまな板の上の鯉になりました。このムスタフイ先生は、無類の教え好きなのです。そこへ来て私は結構教わり上手で、教わり好きなのです。このふたりがコンビになったのだからたまりません。文字どおり朝から晩までヨガのレッスンに明け暮れました。何にも知らなかった私も、ちょっとばかしヨガをかじる事ができたのです。どんなに勉強したかは、私が帰ってから後、先生が腑抜けのようになって二週間ばかり寝てばかりいたとのことからも、わかりますでしょう。私のいる間は、家人は大変嬉しかったそうです。先生が私にばかりかまけているので、鬼のいないうちに洗濯!」という感じだったらしいです。

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ところで、私がここで教わったヨガは、ポタンジャルヨガといって、静かなリラックスを重んじるヨガです。日本では、ごく少数派に属するのです。先生は、そのことをご存知で、「日本人はろくでもないヨガばかりしているそうだから、君は帰ったら、この正統派のヨガを教えて広めるのだ!」とのたまいました。いくら私の心臓に毛が生えていても、ちょっとかじったくらいで、ヨガの先生になるわけにはいきません。でも、日本に帰って暫くすると、いくら弾みからとはいえ、あんなに教わって来たものを、このまま忘れてしまうのは勿体無いなあと思うようになりました。それで、私のまわりにる人達に声をかけて、教えさせて貰ったのです。二、三年くらい、ただで教えさせてもらっていたでしょうか。とにかく教え魔ですから、教えるとなると、たいていの事は何とか格好がついてしまうのです。そのうちに、ヨガを教えているというのが知れて、ぽつぽつと他から声がかかり、知らない間にヨガの先生で通るようになった、という馬鹿馬鹿しいお話でございました。真面目に訊ねてくださったかたには、失礼なような気もするのですが、これが掛け値のないところですので許してください。



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〈筆〉waikari bahchan=木村詩世